イオタ

Last-modified: 2017-11-04 (土) 22:37:01

イオタとは、ランボルギーニが1969年に1台だけ製造した実験車両、またはミウラを元手に製作されたレプリカ車両のことを指す。

 

名前の由来
ミウラをベースにした実験車両が、FIAの競技規定で「付則J項」に該当することから、そのアルファベットを宛てて名づけられた。そこからランボの内外でミウラをこのJ仕様に仕立て上げるカスタムが流行するにつれて「Jota(ラテン文学の字母・Jのスペイン語における名称」と呼ばれるようになり、そこから派生してオリジナルの「J」も「Jota」となっていった。日本では「イオタ」で通るが、母国では「ホータ」となる。またイタリア語には「J」の文字が無いため、「iota」と表記されることもある。*1

 

歴史
イオタはランボで走行実験を担当していたボブ・ウォレスが指揮を執り、1969年11月から「ミウラを改良するための先行開発」という名目で製造が開始された。FIAの競技規定・付則J項のプロトタイプ・クラスにある車両規則を満たして誕生した。ただしオリジナルのイオタはレースに出ることを想定して開発したものではない。これは創業者であるフェリッチオ・ランボルギーニがミッレミリアで大事故を起こしたことに起因し、社則でレースへの出場を固く禁じたためである。
外見やプラットフォームの一部、パワートレーンをミウラと共にする以外はまったくの別物。特にサスペンションはリアセクションの一部を除いてはジオメトリーを最適化、ステアリングラックの位置もレースでの使用を前提としたものへと改められた。以下、改造点である。

  • 四輪ベンチレーテッド・ディスクブレーキの採用
  • カンパニョーロ*2ホイール(フロント9in、リア12in)
  • ブラインドリベットによるボディ補強*3
  • アルミ製前後カウル
  • 固定式ヘッドライト化*4
  • フロントグリルの面積拡大
  • チンスポイラーの採用
  • スペアタイヤの装着
  • トランクルームの新設*5
  • オイル循環方式のドライサンプ化
  • エンジン圧縮比の変更
  • キャブレターの性能向上
  • キルスイッチの装備

前述の通りベースとなったミウラとの共有部分はリアセクションの一部とルーフにエンジン・ミッション程度で、それ以外は殆ど別物のレーシングカーであった。こうして多数のモディファイを受けたオリジナルのイオタは、1971年にかつてポルシェやロータスなどでF1に参戦していたゲルハルト・ミッターがドライブし、ニュルブルクリンクでの草レースに参戦した・・・と史実では記されているが、これは1980年代にランボ公式の社史を執筆したジャーナリストの勘違いによるもので、実際には1968年にホッケンハイムで行われたあるレースに、旧西ドイツにあったステインウインターと呼ばれるランボ公認のディーラーがワークス体制で出場したのみ。しかもイオタではなくほぼノーマルのミウラであったが、ミッターがステアリングを握っていたというのはまぎれもない事実であった。
そしてレースで日の目を見ることがなかったイオタはどうなったのかというと、ウォレス率いるチームによって約30,000kmの走行実験を経た後、シャーシにシリアルNo.4683を与えられて1972年にジャリーノ・ジュリーニに売却された。そこからヴァルテル・ロンキに渡り、アルフレッド・ベルポナー*6がロンキから買い上げた。しかしベルポナーの元へ納車する前に、この取り引きを担当した販売業者のエンリコ・パゾリーニがミラノ東部のプレシア高速道路(しかも開通前)でテスト走行を行っていた最中、230km/hで5速にシフトアップした途端にダウンフォース不足で急にフロントが浮き上がり、そのまま横転して炎上。貴重なオリジナルのイオタは廃車になってしまった。パゾリーニは全治一ヶ月の重症を負ったものの、命に別状はなかったという。
その後ランボ本社では変わり果てたイオタを回収。エンジンなど生きているパーツに関しては別のミウラに載せ換える措置を取った。なおシリアルNo.20744のイシゴニス式ユニットはウエットサンプに改められ、アメリカのある個人オーナーがシリアルNo.4878のミウラに搭載して現在に至る。

 

外見がよく似た「ミウラ」を改造して「J」に似せた個体がランボルギーニ社内外で生み出されるようになったが現存する「イオタ」は全てオリジナルのJのレプリカということになる。ランボルギーニ純正のレプリカ以外にも個人オーナーによりイオタ化されたミウラが多数存在する。


*1 例としてイタリア語で「日本」を表すと「Jiappone」ではなく「Giappone」となる。
*2 現在のテクノマグネシオ。大手の自転車部品専業メーカーであり、日本のシマノやアメリカのSRAMと並んでシェアを独占しているメジャーブランドでもある。
*3 この場合は純粋な補強というよりも、薄いアルミエッジからの破断防止のために打たれている。
*4 レンズはダメージ防止のためアクリルで覆われている。
*5 実用的にはまったく体をなしていなかったが、これも付則J項を満たすために設置が義務づけられていた。
*6 フィアットのチューニング部門・アバルトのセミワークスである「スクーデリア・ブレシア・コルサ」の創立者であり初代オーナー。また生粋のカーコレクターとしても世界的に名高い。